原発事故に伴う損害賠償制度(ご参考)

2011.03.25 11:00

   原発事故に伴う被害者への補償は、法律に基づき事業者である東電が無限責任を負うが、一定の金額までは、東電が加入を義務付けられている民間保険契約か政府補償契約の何れかで担保されることになります。
 上記賠償措置で不足する場合は、東電が全て負担する必要があるが、東電が十分な資力を確保できない場合は、政府が援助を行うことになっています。
 また、今回の大震災が、異常に巨大な天災地変と認定された場合は、東電は免責となり、被害者に対しては政府が必要な措置をとることになっています。

1.原発事故に伴う賠償責任の考え方
我が国における原子力損害賠償制度は「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律(補償契約法)」の二つから成り立っています
上記法律により、原子炉等の運転により生じた原子力損害は、事業者の故意・過失は問われず、事業者が全ての責任を負うことになっています。(事業者の無限責任)
このため、法律では事業者に対し、賠償措置を講じることを義務付けており、事業者は「原子力損害賠償責任保険(民間保険契約)」と「原子力損害賠償補償契約(政府補償契約」を締結しています。賠償措置額は、現在、一工場・事業所当たり1200億円が上限と定められています。(今回の事故では、福島第一原発全体で、一工場・事業所の扱いになります。)

2.賠償措置額の具体的内容
「民間保険契約」は、原子炉の運転ミス等の一般的な事故の場合に適用されるもので、引受能力を最大化するために損害保険各社が共同で設けているプール(「日本原子力保険プール」:損保会館に所在)に事業者が保険料を支払い、引き受けられています。
(注:日本原子力保険プールは、原発を保有する国が同じように設けている各国のプール間で再保険契約を相互締結しています。)
「政府補償契約」は、地震・噴火・津波等を原因とした事故の場合に適用されるもので、事業者が政府に対して補償料を支払い、契約が締結されています。いずれも1200億円が支払い上限となりますが、損害額がこれを上回る場合は、事業者が全ての責任を負うことになります。但し、事業者が必要な賠償額の全額を調達できない場合で、必要と認められる時は、政府による援助が行われることになっています。
今回の震災は、現時点では東電の責任を前提にした上で、「政府補償契約」の対象になるものと考えられます。(注:今後下記3の判断が示される可能性もあります。)

3.例外措置
上記制度とは別に、事故の原因が、社会的動乱や異常に巨大な天災地変と認められる場合は、事業者は免責となり、政府が根っこの部分から必要な措置を行うこととなっています。(注:現時点では「例外措置」対象との判断は示されていません。)

4.留意点
今回は、政府サイドは「先ずは東電に責任を持ってもらう。十分補償できない場合は国が担保する」と述べ、東電サイドも「責任はある」と会見で述べていますので、現時点では上記記載の「政府補償契約」をベースとし、不足分は東電と政府が担保するという形になりそうです。
なお、新聞報道によれば、政府は「政府補償契約」の賠償措置限度額を引き上げるための法改正を検討するとのことであり、今後、極めて政治的な判断が行われる見通しとなっています。
今回の事故では、被害の確定に長い時間がかかるうえに、対象が農家や避難住民の他、休業を余儀なくされた企業等非常に広範に亘る見込みであり、賠償額の線引きは困難を極めるものと想定されます。(注:1999年の東海村臨界事故では賠償総額146億円でしたが、今回は、賠償措置額の1200億円をはるかに上回り、数兆円規模になるのではないかと想定されています。)
東電には国民の厳しい目が向けられているのは事実ですが、過度な負担を求めても結局電気料金の大幅値上げの形で利用者に転嫁されることになります。また、東電が経営不安に陥ると電力そのものの安定供給に支障が生じて、結局は市民生活に大きな影響を与えることになりますので、政府としてはこのあたりのバランスを取りながら、また、財政基盤を整えながらの難しい対応を迫られることになりそうです。